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もしも桃太郎のお供が案山子・ブリキ・ライオンだったら

十五の年には日ノ本無双の名をとどろかせるようになった桃太郎は、力試しをしたがっていましたから、鬼が島なる未知の魔境の話を旅の商人から聞くや否やおじいさんとおばあさんに暇乞いをして、旅経ちました。

 

海辺に向かって歩いていた桃太郎は、あぜ道に腰を下ろすと、お婆さんが作ってくれた黍団子を食べました。

 

そこに、顔を出したのが、案山子、ブリキ男、ライオンでした。

桃太郎は驚きましたが、力だけではなく胆力も備えていましたので、動ずることなく、見据えました。

 

「桃太郎さん」案山子が言いました。

「桃太郎さん」ブリキ男が言いました。

「桃太郎さん」ライオンが言いました。

 

「ぜひお供に」案山子が言いました。

「ぜひお供に」ブリキ男が言いました。

「ぜひお供に」ライオンが言いました。

 

桃太郎は、征伐を成し遂げた後、金銀財宝を持ち帰るのに一人では心もとなかったので、案山子とブリキ男とライオンを供にしました。

 

鬼が島へ向かう船で桃太郎は、財宝の分配を決めようとしました。

「案山子よ、お前は何を望む」

「私は、脳みそが欲しい。知識を蓄えられる脳みそを」

「ブリキ男よ、お前は何を望む」

「私は、心が欲しい。愛しい物を愛しく思える心を」

「ライオンよ、お前は何を望む」

「私は、勇気が欲しい。困難から逃げ出さない勇気を」

 

桃太郎は、うなづくと、「よし」とだけ言いました。

 

鬼が島に着いた桃太郎は、案山子の遠くを見る目と、ブリキの斧捌きとライオンの獅子奮迅の活躍で、いともたやすく成敗してしまいました。

 

財宝を手にした桃太郎は、案山子に向かって言いました。

「案山子よ、どうだ。お前の判断力で成敗できたのだぞ」

「「でも、私の欲しいのは脳です」

「遠くを見る目は、その判断力あっての物種だろうに」

「なんと、いつの間にか欲しいものが手に入っていました」

「ブリキ男よ、どうだ。お前の斧裁きは見事であった」

「でも、私の欲しいのは心です」

「鬼は成敗したが、皆回心した。それもお前が慈悲を乞うたからではないか。それが心だ」

「なんと、いつの間にか欲しいものが手に入っていました」

「ライオンよ、どうだ。お前の力で成敗できたのだぞ」

「でも、私の欲しかったものは力ではなく、勇気です」

「勇気がなくは、強大な力もそもそも制御できまい」

「なんと、いつの間にか欲しいものが手に入っていました」

 

桃太郎は、静まった鬼が島の浜辺で

「なるほどな」呟きました。

空は光にあふれ、舞い上がる白い花が海や空とコントラストをなしていました。

「既に、欲しいものは自らの内にあったのだな」

桃太郎は、そう言うと、金銀財宝は置いて行き、手土産にと砂浜の美しい貝殻を手にしたのでした。