ふらりふらと、近くの校舎へ。出向く。
道に沿って一列に並ぶ桜のよく広がった枝から舞い散る花は、両手に降り積もる。
桜の花は散っているというよりも、みずから散らせているといったほうがふさわしい。
雨上がりにたまった道端の水たまりも花で埋もれている。
私の前には、小学生の女子が歩いている。
お使いの帰りらしく、買い物袋をぶら下げ、スキップを踏みながら、やはり桜の舞い散るなかを歩いているのであるが、拳銃を手にしている。
銀玉鉄砲である。
それが、ガードレールといわず、学校の柵といわず、打ちまくっている。
わたしは、スキップを踏みながら銃を乱射する少女にひとつの世界を示されたような気になり、顔を上げて大きな空を見た。鳥が飛んでいる。
あれが小学生の女子ではなく、二十二歳の女子であれば、無邪気さのかわりに悲壮さに近いものが現れ、凄い映像になるであろう。
桜ばな夜に白く昼に黒くふさぎたいのは君の言葉でなく己の情
雨上がりの春の水は実にたまって猫がのどを潤している。