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榛名湖への道

あくる日、メジャーなところへ行こうと思い、高崎からバスで榛名神社へ向かう事にした。
高崎に着いて、駅前のターミナルに出る。
一時間に一本の割合で榛名神社や榛名湖に行くバス停がある。
あと20分ほどで来るらしい。
お手洗いに行きたくなってきたから、駅ビルに行く。
戻ってきたら、バスは5分前に行ってしまったらしい。次は1時間後である。
仕方がないので、駅の近くにある高崎市美術館に行く。

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展覧会を見て、古い家を見学したりして、戻る。
バスは市内を抜けて山に入る前に休憩をして、山を切費立いた道路を通る。
両側は森である。都合一時間ほどかかった。
バス停で降り、山門に通う道を上る。
ほどなく山門に入る。

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両脇は阿吽像であろうか。
神社らしく、神人のような姿をしている。
本殿は朱塗りで軒下には竜がいたり、装飾も華美で荘厳な雰囲気を漂わせている。

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休日であるから、参拝者もつらつら歩いている。
参拝を済ませ、茶店に入り、味噌おでんを食べる。
梅干しも置いてある。
お手洗いを澄ませると、裏の方に道があり、『榛名湖への道』という、金属製の新しい看板が出ている。
歩いて行けるのか、と思った。
2kmと書いてあるから、ゆっくり散策がてら1時間も掛からないだろう。
自分は先日も二荒山で山歩きを経験済みである。
今回も散策してきれいな空気を浴びようと思う。
前回との違いは、駅からここまでのバスの距離と、どうも途中から山に入っていった事くらいである。
また、神社自体もどうも急勾配が多い気がするが、その程度である。
乗って来たバスが榛名湖まで行っていたはずであるから、帰りは榛名湖からバスで帰ればいいだろう。
山道に入り、小川のせせらぎを聞き、杉林の下を通り、足元に群り咲く黄色い花を見ながら、緩やかに上ったり下りたりする。
道路近くに出たのか、上の方から車の音が聞こえるが人はいない。
歩いているのが自分だけなのではないかと思えてくる。
途中に『関東ふれあいの道』という標識が出ていいる。

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榛名湖の案内がないが、木々の間に『天神峠』と矢印がほとんど木の一本ごとに張ってある。

これは分りやすい。迷いようがない。
木の間を通り、木組みの階段を登る。
行こうとしている榛名湖近くの峠は先ほどは1.3kmだったのが、0.8kmになっている。
15分程度しか掛かっていないから順調である。疲れも感じない。
先日の山に比べてこちらはより奥深く、人もいない。車の音も聞こえなくなって、少しだけ冒険気分である。
又進んで、標識がある。先ほどからまた15分ほど歩いた気がするが、またしても0.8kmとなっている。

標識がだんだん古びてくるのが気になる。

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人の通い道とも思えない。
一本道であるので、進むと、道端に『遊歩道 至榛名湖』とだけ書かれたものが矢印と共に木の板に張ってあるが、Wordで作ったようなプリントである。

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しかし、進むしかない。進むしかないが、始めは上がったり降りたりであったのに、先ほどからひたすら登っている気がする。
木に覆われていて分からぬが、妙に高い所にいる気がする。

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明るくなってきた気がする。
ふと見ると、遠く近く山々が見える。
山の麓に水が広がっているように見えるが、あれは榛名湖であろうか。

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榛名湖に決まっているが、遥か下に見える。
自分は榛名湖が見えるところまでようやく到達したのか。
むしろ遠ざかっているのか。
榛名神社の裏から1時間以上も歩いているのであるが、向うに見える、天辺がとがっていない山は榛名富士ではないのか。
自分はどこにいるのか。
もっていたスマホで地図を見る。現在位置を見ると、山の中にポツンとマーカーが示されているだけで、近くに道などない。
しかし、自分は関東ふれあいの道を看板通りに歩いてきたはずである。
どうなっているのか。
見上げると、どうももう少しで頂上らしいから、とりあえず、木組みの階段の一本道を登っていく。

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登ると開けた場に出て、ベンチや木の看板が関東ふれあいの道の説明と地図を見せていた。

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今、自分は榛名湖の南の方にいて、確かに関東ふれあいの道に立っているらしいが、その案内板では、関東ふれあいの道からどうやって榛名湖に行くのか、そもそも近くの自動車道に出るのか、その連絡の案内がまったくない。
このまま歩いて行くと、七曲峠とかいう自動車道と直行する形で出られそうであるが、地図を見る限り、榛名神社からここまでとほぼ同じ分であり、しかもその交差点は榛名湖の畔と言うわけではない。ただの峠のど真ん中に出るだけである。
バス停の案内もあるが、この場からどうやってバス停に行くというのであろうか。
崖を駆け下りろとでも言うのであろうか。
どうなっているんだ、環境省及び群馬県
また降りて、また登る。

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この辺りで気づいたが、榛名湖は確かカルデラ湖であり、周りを山々が峠で連なり、自分が歩いているのは峠であり峰である事、つまりは修験者が行に入って歩くような道であり、『遊歩道』ではない。
梯子を山の斜面に倒したような階段を上る。左は榛名湖まで続く崖であり、右側はどこまで続くのかわからない崖である。
梯子も人一人が通る分しかない。
立ち止まって背筋を伸ばすと、立ちくらみがするようであるから、ひたすら足元を見つめて登るが、太腿が上らない。もう2時間近く山の中を登ったり下りたりしている。
先日、25km歩いたのは平地であるし、二荒山は緩やかな勾配で、他にも観光客がいた。
自分はとうとう階段の途中で立ち止まる。
これは、と思う。
この先どれだけ歩いたら榛名湖に出られるのか。
引き返そうか。
後を振り返る。
階段が崖のように見えた。
とてもではないが、降りられそうもない。
数歩登って立ち止まり、休み、また登る。
その感覚が短くなる。
遠くで雷鳴が聞こえだした。
登ったと思えば、降りて、下り続けられるのかと思えばまた登る。
途中からその繰り返しである。
折り畳み傘を持っているが、山の中での雷雨に遭遇したらない方がましであろう。
自分はそもそも榛名神社に参拝に来たのである。
服装もジャケットにワイシャツ、スラックスで、靴も革靴である。
鞄もサラリーマンが使うような黒いA4サイズの書類が入るような物を持っている。
参拝をして、すがすがしい気分で帰ろうとしただけである。
それがどうして、榛名湖を見下ろす山の頂に立っているのであろうか。
他に人もいないのに。
再び頂上に出る。
また頂上から榛名湖を見下ろす。本日二度目である。

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榛名湖と湖という案内がある。地図はない。氷室山1,236mと書いてある。

 



ゴミに関するマナーポスターが貼ってあったが、自分はそもそもゴミになるような物を持っていない。
味噌こんにゃく一切れと梅干し、お茶を飲んだだけである。
少し休みたいが、雷の轟は大きくなり、空は暗くなってくるのが目に見えてわかる。
案内には峠や山の方向を指し示す札と、近くのバス停を示す札が直角に立っている。

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榛名湖はどうやったら行けるのか。
この先よく知れぬ峠を歩いても仕方がない。
体力が限界である。
バス停に出たところでどこに行くのか知れないが、とにかくどこかの駅につながっているであろうし、電話もそこなら繋がるであろう。
自分はバス停に向かって歩き出した。
笹薮を、とりあえず人が通れる分だけ切り開いたような道であり、もはや関東ふれあいの道ではないかもしれないが、それは疾く抜け出したかったから、そのまま下り坂を降りる。

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歩くうちにだいぶ先まで見通せるようになり、それもくだりである。

平らな道にも出たが、その後はまたくだりである。
元気が出て来た。
どうも戻れそうである。
榛名富士のロープウェイもカメラで収まるほどの距離である。

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先ほどの頂上から20分ほどで看板がある。見ると『榛名湖0.6km』と指示していた。

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やっと榛名湖の看板が出た。
その先の道は、もはや完全に関東ふれあいの道ではないようで、藪に覆われ、目を凝らせばけもの道のような者が見える程度であったが、下にはもう大きな駐車場が見えているから、分らなくなっても滑り降りれば済む。

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二度三度滑りながら、スラックスと革靴を草まみれにしながら、ようやくついたのであった。
到着地点は、もはや道でも何でもなく、駐車場の端にある物置の裏であった。

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しかし、自分歩いたのは、本当に『榛名湖への道』であったのであろうか。
単に山に入って、いきなり山から人里まで降りて来ただけではなかったか。
駐車場に止まる車は一台もなく、入口も閉まっている。

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乗り越えて出て、道を渡って、榛名湖である。
雨雲が近づいているし、時間も時間であるから観光客の姿はなく、ボートも湖岸に寄せられ、犬の散歩がいるくらいである。
自分は榛名湖畔を歩き、展示館でお手洗いを済ませ、バスの時間まで休む。
雨が降ってきた。山の中で降られなくてよかった。
バスの時刻をスマホで見ると次のバスは一時間近く待つらしく、その後も一時間おきに来るらしい。
近くにロープウェイ乗り場があり、乗ってみようかと思ったが、バスに乗れないと、タクシーで高崎まで戻るか、この辺の旅館に泊まるしかなくなってしまう。
ロープウェイに乗るのは止して、乗り場まで歩いて、戻りがてらバス停を見る。
すると伊香保温泉行などとある。赤城山も行くらしい。
しかし、自分が乗りたいのは高崎駅行である。
途中で高崎駅に寄るのかな、などと思いながら、土産物屋で見物をしながら、はたと思った。
どうも、自分は高崎駅に行くバス停の近くにいないのではないか。
急いでスマホを取り出して、地図を出す。
やはり自分は目当てのバス停と違う所にいるのであり、目当てのバス停は湖の反対側である。
バスが出るまであと20分である。
自分は折り畳み傘を片手に湖の畔の道を歩き出した。
雨が強くなる。土砂降りである。
ズボンもジャケットも雨に当たるが、急ぐしかない。
バス停には5分くらい前に着き、バスはまだ出発していなかった。
他に二人待っていた。
自分もバス停の屋根の下に入り、傘を締っていると、バスが来て、止まって扉が開く。
しかし、バス停から数メートル離れている。
雨は土砂降りである。
もう少し近づけそうなものであが、自分と他の乗客は仕方なく濡れながら乗車した。
ほっとはしたが、寒くなり、濡れた上着を脱ぐ。
さらに山道の蛇行で酔う。
途中の休憩でたまらず降りてベンチで止むんで、ようやく帰った。
後でこのことを人に言ったら、『榛名神社と榛名湖は別物ですよ』と呆れられてしまった。